2021年11月27日土曜日

【新洞探査】ワクワク熊本県白鳥山~宮崎県椎葉村2021/11/20-23(後半)

11/22-23 宮崎県・椎葉村(前の谷、仲塔、水無)エリア

3日目からは椎葉エリアへ。椎葉村は、1990年代の洞窟調査記録もあり、総延長2000mを超える仲塔洞で有名だ。一方で、日本の三大秘境の一つと云われるだけあり、大変アクセスが悪いので、以後あまり調査されていないと思われる。

新しいエリアで新洞を探す時は、まず調査済みの穴がどんなところにあって、どんな形状かを把握するところから。という訳で、1日目に位置確認しておいた「前の谷第1洞」に入洞し、続いて「前の谷第2洞」に行く計画とした。

朝から予報通りの雨で、3名ともテンションが上がらないままノロノロと装備を準備して、縣さんのリギングで第1洞に入洞した。順番を待っている間にも、風と雨が強くなってきた。洞内は報告書の測図通りで、ロープで25mほど降りると、狭い泥の斜洞になっており、奥はクラックに沿ってできた1空間で終わっている。

第1洞から出てきた時には3人とも「寒い」しか言えず、戦意喪失。雨は午後も降り続く予定で、これから山を上がって第2洞を探しにいける気がしなかった。

それで、計画を変更して、昼飯ついでに、車で椎葉村の下見に行くことにした。前の谷は椎葉村のなかでも最西端であり、村の中心部までは車で約1時間かかる。中心部には、役所、学校、スーパー、博物館などが集中している。目当ての蕎麦屋は14時で閉店していて、スーパーの隣にある、パン屋・コンビニ・酒屋・ライブラリーカフェが一つになった店「中園本店」でランチをし、スーパーで夜ご飯の買い出しをした。吉田さんがはりきって、鍋にしようというので、小さなスーパーの端っこに売られていた蓋付きの鍋と鍋具材を買い込んだ。

そこから、次回以降の合宿候補地として、仲塔エリアに向かい、廃校を宿泊施設にリノベした「渓谷の館」や仲塔洞のある十根川流域、さらには前の谷に戻る途中で、水無橋~水無エリアを下見した。仲塔洞はもちろん、水無橋の周辺には耳川に沿ってたくさん既存洞が報告されており、中にはそれなりの長さのものもあるので、椎葉で合宿する時には遊べそうだったし、まだ調査されていない石灰エリアも多そうだった。

段々と日が傾いてきて、前の谷に戻った時には薄暗くなっていたが、雨はほとんど上がっていた。寒くなる前に、さっそく鍋の準備に入る。吉田さんが手で野菜を千切って放り込む。肉、野菜の他、卵を殻のまま入れて同時にゆで卵も作るという大雑把なキムチ鍋を食べ、のんびり酒宴に興じて就寝。ガソリン節約のため(スタンドは1時間以内にない)エンジンを切って寝たのだが、この晩は雪もちらつき、かなり冷え込んでいた。









最終日は第2洞に入ることにした。場所は第1洞から150m登ったところ。しかし、笹薮が繁っているので直登できず、横にあった作業道を辿って登ることにした。途中、頑丈に張られた鹿避けネットなどもあり、大きく迂回しながら斜面を上がっていく。朝日が昇ってきて、昨日雨に濡れたケイビングスーツも少しは乾きそうだ。

目的地近くまで来ると、石灰の露岩がちらほらと現れ、記述通り杉林と雑木林の境界に、陥没穴が開いているのを、縣さんがいち早く見つけた。







穴の周りをぐるりと廻ると、陽光に照らされて、穴からもわもわと湯気が上がっているのが見えた。洞窟内は年中一定の気温のため、冬は洞内の方が暖かく、気温差で温泉のように湯気が上がる。

報告書によれば、第2洞は斜めに降りていく穴で、3つの大きなホールがあるとのこと。入り口部分は16mの竪穴になっているようだ。降りてみると、最初のホールは思っていたよりも広かった。

ホールの下奥からヘッドライトの灯りが漏れていて、覗くと狭い隙間を縣さんが掘って開いていた。さらに奥へ進むと通路はかなり狭く、次のホールに続くルートは砂利で埋まってしまったのだろうかと思われた。測図によれば、洞窟はこのまま斜め下に向かっていくはず。私がそこを掘り進むことにして、その間、縣さんはホールの横に開いている支洞を見に行くことになった。

通路の地面は砂利と泥だったので、手でたやすく掘ることができ、私がギリギリ通れる隙間になった。先には次の大きなホールがあると思ったが、天井のあまり高くない、上と下に向かう小ホールに出た。まだ下に行くかなと思ったけれども、下は見た感じ埋まっているようだ。どうしたものだろうと思いつつ、戻ってみると、吉田さんもホールに降りてきており、3人でもう一度測図を広げて見直すことにした。

ホールの様子と測図を何度見比べても、支洞はあるけれど、段差がなかったりと、どうもおかしい。何かのきっかけで穴が埋まったり崩れたりすることはあっても、ここまで大きく形が変わることはないだろう。そういえば、私の見に行った奥の空間には人が入った形跡がなかった。穴の場所も予想と少しずれていた気がする。どうやら、これは第2洞ではなく、まったくの新洞らしいと3人でざわめいた。こんなに分かりやすいところにあって人跡未到?と思うけれど、それは水上越の穴でもそうだった。

3人でホール横の支洞を調べた後、帰りの時間も迫ってきたので外に出ると、晴れていた空は曇り、また雪が降り始めていたけれども、探検の満足感と高揚で、寒さも紛れる気がした。

途中、第2洞、第3洞を探し、笹とイバラの薮をかき分けながら下山した。第2、3洞は隣の杉林の薮の中にあった。周辺には他にも穴があり、先程の新洞を第4、薮の中の穴を第5として位置情報をスマホアプリに記録した。

このエリアにもまだまだ新洞がありそうで、椎葉には再び絶対来たいと思った。


帰り道、二本杉峠の茶屋「東山本店」に立ち寄った。この辺りには他に店がなく、去年の夏の熊本合宿でもお世話になったお店だ。チームの近野さんからは、ここで買った山椒オリーブが大好評なので買ってきて欲しいとリクエストを受けていた。お土産を買うついでに、ヤマメの天ぷらや地鶏や山菜そばでお腹を満たして、グネグネの山道を下り、熊本空港に向けて帰路についた。

おかざ


2021年11月24日水曜日

【新洞探査】ワクワク熊本県白鳥山~宮崎県椎葉村2021/11/20-23(前半)

11/20-21 白鳥山・水上越エリア

11/19夜、縣、岡、それぞれ熊本空港に到着。
GWの高千穂探査の際にも立ち寄ったスーパー・キッド益城店にて買い出し。五家荘方面にはコンビニもスーパーも無いので、多めに食料と水を買い込む。
かろうじて開いていた御船町の中華料理屋で晩ご飯を食べて、一台の車ともすれ違わない二本杉峠を超え、吊橋で人気の「梅の木轟公園」にて車中泊。満月(この日の17-19時は月蝕だった。)でライトがなくても明るい。風もなく思ったより寒くない。

11/20朝、白鳥山御池登山口に向けて出発。
白鳥山に登る前に、まずは既存洞「前の谷第1洞」の確認から。資料に詳細な場所が書かれているのですぐに見つかると思いきや、意外と苦戦した。何度か行きつ戻りつして、笹藪の中に埋もれていた竪穴の洞口を発見した。
車に戻って、縣さんの姿が見えないと思ったら、少し離れたところに掘ったら進めそうな別の穴を見つけていた。こちらの穴と第1洞は活動後半の課題とする。

白鳥山(1639m)には2016年にも熊本県側から登っているが成果なしだった。今回は宮崎県側から上り、前回確認できていないエリアを調査する。
1日目は御池登山口から山頂に向かう。標高1500mを越えたあたりから地面が白いと思ったら、溶け残りの雪だった。山の上にはもう冬が来ていた。




















虫もいなくて、日差しは暖かく、山登りに最適な一日だった。山頂を通り過ぎ、ひたすら西進、今回は直線距離で約6km先の山犬切(やまいんぎり)まで行く予定である。途中、ドリーネを調べたり、小さな土穴を見たりしている内に、日が暮れかけてきた。17時過ぎには日没なので、山犬切より手前の谷にテン場を定める。

私は持参のテントを設置、縣さんは、1桁台の気温でもハンモックで寝られるかどうか検証のため、樹の間に吊ったハンモックの上にレスキューシートを筒状にしたものを被せて寝る。見た目はホイル焼き料理のようである。















今夜も月が明るく、ほぼ無風。それでも、さすがに標高が高いので、テント内もひんやりしている。縣さんは大丈夫だろうかとジッパーを開けて外を覗いたら、意外にも寝息が聞こえてきたので、案外と快適なのだなあと羨ましがりつつ就寝。
翌朝、縣さんにハンモック泊の感想を聞いたら、寒くてほとんど寝られなかったとの言であった。

2日目は荷物をテント内に残置して、稜線伝いに山犬切方面を探索。途中立派な石灰岩の岩盤があったが、峻険すぎて下に降りられず、次回の課題とする。山犬切の付近はドリーネはあるものの、露岩は少なく、地質図とやや違っていた。テン場に戻って荷物を取り、登山者もついでに見に行くという大ポノール(吸い込み穴)に立ち寄る。雨季には大きな水たまりになって、山から集まった水が地下に吸い込まれていくのだろう。乾いた平らなポノールの底を歩いていると、縣さんが上の方から、あっちに入れそうな穴があるよと言うので、それは朗報といそいそ上がっていく。上は石灰岩の露岩がたくさんあり、苔生していて、洞窟がありそうな良い感じの場所である。ウロウロしていると、今度は「入れそうな穴がある~」の声。急いで向かって見ると、斜面の岩の間に竪穴が開いている。大きな樹の下は陥没したのか、根が露わになっていて、その下にも空間がありそうだ。











日没までに下山というタイムリミットがありながら、やっぱり入ってみたいということになり、ロープを張って入洞する。斜めに20mくらい降りて、少し奥に行くとすぐに行き止まりだった。小規模だけど、立派な洞口で、これが名前もなく未調査というのも不思議である。とりあえず、MK(水上越/みずかみごし)1と名付けておく。










もう一つの、「入れそうな穴」の方はドリーネの端に開口、木の根っこをどけて、狭い隙間を覗くと15mくらいの垂直の竪穴になっていた。こちらも洞底に降りて少し行くと先は塞がっていた。こちらMK2。













この付近は探したらまだ他にもありそうと後ろ髪を引かれつつ、時間がないので下山方向へ向う。天気予報よりも早く、17時ごろにパラパラと雨が降ってきた。

下山後、風呂に入りにいくことにして、車で1時間半かけ、曲がりくねった山道を五木村の温泉へ向う。うんざりするほど遠いけど、汗を流せて、温まれるのはありがたい。
活動後半からは隊長の吉田さんが合流する。待ち合わせ場所を梅の木轟公園にして、再びの車中泊。
車に当たる雨音が激しくなってきた。翌日は100%の雨予報だ。

今回のルート