2020年8月19日水曜日

【新洞探査】限界ギリギリ熊本合宿その3

その3 8/14-16 京丈山(きょうのじょうやま)

本日から後半戦。前日に大西さんに偵察に行ってもらったところ、これまた林道が通行止めになっていたため、二本杉峠から登山道を歩いて京丈山を越えるロングコースに変更となった😂

大西さんと吉田さんの会話をラジオみたいに聴きながら歩いた。私はアウトドア業界に詳しくないが、大西さんは那智滝や称名滝を登るなどチャレンジングな活動をされてきた有名な沢のぼり屋さん。近野さんは著書も持っているそうだ。

体力温存でのんびり歩く私たちをよそに、縣さんの姿はもう見えない。奥の石灰岩エリアを見てくるから、みんなは手前のエリアを見といてと言い残して、さっさと先へ行ってしまった。登山口を朝9時に出発し、昼に京丈山山頂、目的のエリアに到着したのは14時半くらい。5時間以上かかった。斜面に岩盤が見えたので、4人で分かれて洞窟を探しながら、日暮れまでにキャンプ地で合流することにした。

今回も、石灰の露岩は沢山あるが穴らしきものはまったく見つからない。うーん、洞窟ありそうな雰囲気なのだが。露岩を追って下る内に、岩がなくなってきたので、諦めて谷に下り、テンバに向かっていると、小滝の横に立って入れる穴が開いていた。綺麗に開いているが、ここは石灰の地質ではないから、もしかしたら昔の坑道跡かもしれない。

テンバに着くと、私が最後で、近野さんはハンモックを、大西さんは持参のツェルトをセットしており、吉田さんと縣さんは枯れ木に火をつけようとがんばっていた。縣さんが釣ったヤマメを塩焼きにするのだ。20センチくらいのヤマメがちゃんと人数分、用意されていた。大西さんも釣竿を持ってきていて、薄暗くなった沢を遡っていったが、残念ながら小さいのしかかからなかったらしい。焚き火でこんがりと焼けたヤマメは香ばしく、身がふわふわっとしていて贅沢な味だった。

近野さんと私は、前半の教訓を活かして、ハンモックの下側にレスキューシートを巻いて保温に努めることとした。銀のレスキューシートをハンモックに巻いた見た目はシャケのホイル焼きそっくりだった。

本日の高低差 二本杉1100m 京丈山1472m テンバ960m 合計884m

2日目。ホイル巻のおかげで夜に谷風が抜けてもほとんど寒さを感じることなく、快適に寝られたが、さすがに朝は寒くて目が覚めた。縣さんと大西さんは手前の広い石灰エリアを見に行くというが、私は二人のスピードについて行ける気がしないので、吉田さん、近野さんと一緒に小さいエリアを見に行くことにした。途中、大西さんが沢で華麗に釣り竿を振っているのを谷の上から眺めた。見ていると、さっとヤマメがかかる。5匹(人数分)ゲットしましたよ~とニコニコしているのを見て、吉田さんが羨ましそうに「俺も釣りやろうかな~」と呟いていた。たぶん性格的に向いていないんじゃないかと思うけど…。

沢を離れて尾根を登っていくと、吉田さんと近野さんが来ないので心配していた。近野さんの足取りが弱々しいのを見て、このまま一緒にた行動していたら明日の帰りが大幅に遅れると吉田さんが判断し、いまから車に帰れと説得していたらしい。足の裏に大きなマメができていて痛そうだなあとは思っていたが、近野さんは常時マイペースで弱音とか吐かないので、さすが付き合いの長い吉田さんならではの配慮である。近野さんは登山道に向けて別ルートへ向かい、私は吉田さんとピーク近くで合流した。今日の行程は割と時間がたっぷりあったので、吉田さんがJETを4人でスタートした時の話や珊瑚洞のログハウスを作った時の話をしてくれた。

吉田さんに斜面を任せて尾根を超え石灰があるはずのエリアを歩くも、地質図通りに石灰が出てこないので、合流地点に向かって斜面を降りていくことにした。途中、石灰がちらちら出てきた。だが、自分のスタミナが切れかけていて、昼過ぎには石灰を見るために斜面を登り返す気持ちは早くも薄れていた。15時過ぎに早々とテンバ候補地に着き、しばらくすると吉田さんから連絡が来たので再び合流した。蚊に襲われながらハンモックを吊り終わったころ、縣さんから連絡が来て、大西さんと縣さんでヤマメをたくさん釣ったので、火を焚いておくようにとの指示だった。昨晩に引き続き、塩焼きヤマメパーティだ。

昨晩の苦労から焚き火の着火をマスターした吉田さんがあっという間に火を起こした。大西さんと縣さんが釣ってきたヤマメは大小合わせて18匹。食べる人が1人減ったので、それぞれ好きな焼き加減で、お腹いっぱいヤマメを堪能した。明日はやっと帰れる。

ヤマメパーティー
ヤマメパーティー


本日の高低差 テンバ960m ピーク1370m テンバ1112m 合計668m

翌朝、一人で早起きして、焚き火の残り炭に火をくべていると、突然バキッという音が聞こえた。私のところからは樹の陰で見えなかったが、なんと吉田さんの買ったばかりのハンモックが真っ二つに裂けていた。私がAmazonで買った2500円のカヤ付きハンモックなら壊れても納得だが。一体どんな使い方したらそうなるんだろうか。最終日でよかった。

再現画像

行きに5時間以上かかった道を戻るには、下り基調とはいえ辛かった。かかとの靴ずれが痛いのか足の裏全体が痛いのかよく分からなくなっていたけれど、あとは帰るだけと思えば、まだがんばれそうだった。しかし、他の3人はまだ生きが良さそうだし、あんまり遅れては申し訳ないと思いつつ、山頂付近の構造洞窟とその周辺を探索する3人を横目に、ひとり先を急ぐことにした。露岩帯の登山道はわかりにくいので、気がつくとふらふらと道をはずれていた。まあ、方向が合ってて石灰のあるところならいいかとGPSを眺めながら露岩を乗り越えると、足元に穴が開いている。おお、こんなところに穴らしい穴が!かがみ込んで小石を投げ込んでみる。そんなに高度はなさそうだが、ひとつあればまわりにもある可能性が高い。見回してみると、下の方に怪しいくぼみもある。荷物をおいて、見に行くとこれもちゃんと岩の溶けた洞口だ。5日間も探して何もなかったのに帰り道の最後で見つかるなんて〜😂


まだ手前のエリアを探索していた3人を呼び、一つ目の穴にフリーで降りる。底から横方向に続いていたが、10メートルほどで終わっていた。途中、アナグマの骨が全身残っていた。

くぼみの方は、高さがありそうなので15mの補助ロープで降りることに。ロープが足りなくて途中でつないだけれど、イタリアンヒッチで降りているので、ヒーヒー言いながらつなぎ目をやっとこさ乗り越えた。なんとか下に降り、横方向に続いているのは確認したが、ケイビングスーツじゃないと、狭いところでひっかかりそうだったので、とりあえず上に引き返した。

思いがけない洞窟探検で残り少ないHPが更に目減りした。あと1時間は歩かないと車に戻れない。それでも下り基調だったのでまだ良かったが、最後の最後に3回位アップダウンがあって泣きそうになった。ようやく山を抜け峠に抜けた時は、洞窟から出たのと同じくらいの開放感だった。昨晩の内に戻っていた近野さんが、車の中を整理して私たちの帰りを待っていてくれた。

みんなで茶屋でご飯を食べ、まだしばらく九州に残るという大西さんとお別れして下山した。

本日の高低差 テンバ1112m 京丈山1472m 二本杉1100m 合計732m

2020年8月16日日曜日

【新洞探査】限界ギリギリ熊本合宿その2

その2 8/11-13 天主山 新洞探査

当初、内大臣川沿いから入山予定だったが、先月の大雨で林道が通行止めになり、登山口まで行くことができないことが出発直前に判明していた。検討の結果、確実に入山できる鴨猪川から穴谷を越え、天主山山頂を目指すことになった。まだ台風の影響でシトシト降る雨の中、面白味のない非石灰の古い林道を歩くだけのスタート。荒れた林道を辿っていると、斜面に線路がある。ちゃんとレールと枕木が残っていることもあれば、斜面が崩落してレールだけが空中に浮いている箇所もある。地図上では、レールの最終地点に何かの建物があるらしかったが、行ってみると、その谷のどんつきには、流されたのか壊れたのか、建物らしきものは何もなかった。あとで地元の人に聞くと、廃線は材木を下ろすためのものだったそうだ。山奥に延々とレールが敷かれてあるのは不思議な風景だった。林業の盛んだったころは道も綺麗で、人で賑わっていたのかもしれない。

谷の奥から石灰岩のエリアに入るべく、一気に稜線へ上り、登山道を天主山の山頂に向かって歩いた。時々休憩のために止まると、アブが集まってきて刺そうと(噛もうと?)する。私は刺されても数センチのアザのような腫れができるだけだが、縣さんはめちゃめちゃ広範囲に腫れが広がる。体質なのか。

稜線に石灰の露岩が現れたころには、日が暮れかけていたので、山頂の手前の登山道付近にテンバを定め、荷物を置いて周辺の洞窟探査に移った。疲れた脚を引きずって岩盤の基部を見に行くが、穴らしきものも何も見つからず、諦めてテンバに戻った。

私は最近、家の裏でカヤつきハンモックを吊るして昼寝をしている。テント持っていくよりもお手軽だし、山中では涼しくていいかと思ってそれを持って来た。そんな思惑とは別に、先月霧穴の洞内泊で、縣さんが超軽量ハンモックを持ってきていて、これはなかなか良いと言ったのがきっかけでチーム内にブームが来た、のかどうかは知らないが、他の3人もみんなハンモックを持ってきていて、偶然にも4枚のハンモックが吊るされることになった。吉田さんは買ったばかりのハンモックがすっかり気に入ったらしく、一切ハンモックから降りずにご飯を食べ、就寝。正直、日が沈むと寝る以外にやることもないので、だいたい8時から9時には寝て、6時から7時に起きるという生活になった。

生活感あふれるテンバ


しかしながら、高度1300mではハンモックは涼しいどころか寒かった。稜線を風が抜ける度に背中がスースーする。レスキューシートにくるまって、ようやくウトウトした。起きたら、ダウンジャケットに身を固めた吉田さん以外、全員口を揃えて寒くて寝られなかったと愚痴っていた。ハンモック山行ビギナーなので、失敗も致し方なし。

本日の高低差 パーキング600m 稜線1514m テンバ1475m 合計953m

前半の探査のメインエリアは、内大臣川流域から広河原なので、2日目は天主山山頂を越えて、高度差800m下の谷へ降りて行かなければならないハードコースだ。途中、縣さんが上の方の斜面で短い洞窟を見つけた以外、特にめぼしい成果もなく、沢を下って内大臣川に着くころには、私は寝不足と靴ずれで、かなり疲労が溜まっていた。縣さんも、広河原の岩盤が立派なのを見て、これはぜひ探したいと言ったものの、今回はちょっと無理そうと諦めて、川の横にテンバを作って、また背中をスースーさせながらハンモックでウトウトした。

本日の高低差 テンバ1475m 山頂1494m 谷下580m テンバ744m 合計1097m

3日目はまた天主山山頂に登り返し、登山道を降り、車に戻る計画。つまり、また800m登って800m降りるわけ。といっても、さすがに直登ではなく、1200くらいまでは、傾斜のゆるい、所々土砂で壊れた林道をうねうねと登っていく。洞窟も見つからないので、テンションは上がらない。山を降りたら焼肉を食べるぞーというモチベだけで、それぞれ重い足を進めた。山頂を過ぎ、登山道に入ってしばらくして、縣さんが遅れ気味の近野さんを待つことになった。道標がまばらでわかりにくく、道を外れる可能性がありそうだ。吉田さんと私は、延々と続く下り坂の登山道を無言で降りて行った。林道まで出た時には、さすがに二人ともほっとして、えらい登山道だったねーと笑った。

停車場に着くと、たくさんの車が停まっていた。消防の赤い車とアンテナを見て、吉田さんが、おい、誰か遭難したみたいだぞ、と言ったので、えーそれは大変と思いながら、車を開けていると、吉田さんが消防か警察の人と何か話している。なんだろうと思ったら、吉田さんが、おい、俺たちだぞ、という。レンタカーが連日停まっていたので、誰かが心配して通報したが、登山届けを出していなかったので、昨日から捜索に入ったらしい。そういえば、昨日の午後、ヘリの音が聞こえたなあと思い出した。まさか自分が探されているとは夢にも思わず。

普段よく行く岐阜や三重ではメジャーな山に登らないし、そもそも登山道を歩くことが稀だったり、石灰の様子次第で行程が変わるので、登山届を出すということをすっかり失念していた。

届けてなくて、すみません、と謝ったが、レンタカーも16日まで借りてるし、まあ縦走してるんだろうと思ってました、無事で良かったです、と案外にこやかに対応してくれた。全行程とメンバー全員の個人情報を聴取され終わった頃、ちょうど縣さんと近野さんも下山してきた。

レスキューチームの中に、消防でも警察でもない、山に詳しいおじいさんがいて、私達が車の横に干していたケイビングスーツを見て、これは穴谷の穴に潜ってるんじゃないかと思っていた、と言ったので、谷に穴あるんですか?と聞いたら、知っとるが、絶対教えん!と突っぱねられた。地元で生まれ、この辺りの山のことは庭のように知っていて、消防や山仕事の若い人たちを訓練していて、足跡見たら何人入ったかもすぐわかる、などなどの話をされていて、なかなかお喋り好きなおじいさんだった。私達には無理に聞き出すつもりは全然なかっけれど、穴については最後まで絶対教えん!を繰り返していた。

レスキュー隊が全員帰ったので、装備を洗って、下山した。後半の計画から合流予定の沢屋の大西さんと待ち合わせ、近くのレストランに焼肉を食べに行った。ご飯を食べながら、2日ぶりにLINEを開けたら、レンタカー会社を通してか、私の親にも連絡がいっていて、今朝から心配と叱りのメッセージが母と姉から入っていた。熊本に行くとも山に行くともなんとも言っていないので、突然熊本の田舎の警察から連絡が来てわけがわからなかっただろうと気の毒に思う反面で、あー面倒と思いながら、説明と謝罪に追われた。

晩は、また道の駅で寝た。外で大西さんと談笑する縣さん近野さんを横目に、吉田さんと二人、クーラーを効かせた車内でウトウトしていると、いつのまにか後ろの座席と荷物置き場が寝床に早変わり、コンパクトカーの車内にギューギュー詰めで4人が寝た。だが、後ろはさすがに狭かったのか、朝起きると、縣さんも近野さんも外で寝ていた。運転席も中途半端にしか座席が倒れないので快適な寝床ではなく、寒いハンモックと同じ程度にウトウトできただけだ。山は寒すぎ、下界は暑すぎて、ぐっすり寝るのに適さない。

本日の高低差 テンバ744m 山頂1494m パーキング600m 合計1644m

その3 8/14-16 京丈山に続く

【新洞探査】限界ギリギリ熊本合宿その1

その1  8/10 ガシラ洞探検(新洞)

シラガ岳の尾根にある竪穴だからガシラ洞(縣さん命名)


朝10時に阿蘇くまもと空港で吉田、縣、近野をピックアップ。台風5号が南を通るらしく、空模様が怪しい。買い出しをして、白滝公園に着いたころ、強い雨が降ってきた。雨雲レーダーによれば、1〜2時間後にはあがる予報なので、公園向かいのカフェでお茶をして時間をつぶす。

縣さんのオヤツ、カメロンパン


雨脚が弱くなったので、白髪岳への林道へ向かうも、すぐに「通行止め」の看板にぶち当たってしまった。人吉ほどではなくとも、先月の大雨の被害は熊本のいたる所に出ているようだ。しかたなく、南から国見岳を越える遠回りの道へ切り替え。1時間弱、やや荒れた山道を走り白髪岳山頂付近に停車した頃には雨も弱まった。


10分くらい歩くとガシラ洞の洞口に着く。白髪岳の尾根は、苔生した露岩がたくさんあり、雰囲気の良いところだ。近野さんと吉田さんが測量をやってくれるというので、私は縣さんに続いて洞内に降りる。下向きのクラック状に開いた第一ピッチの底には縣さんが広げた泥まみれの隙間があり、チムって降りるとまた狭い岩の隙間、その先からが未踏の竪穴だった。15メートルくらいのピッチに縣さんがアンカーを打って降りると、底に穴があり、まだ続いている。だが、螺旋状の狭いクラックで通り抜けができない。縣さんと代わりばんこでチャレンジするが、どうしても身体のどこかがつっかえて抜けられない。下向きなので、ぐいぐい行って戻ってこられるだろうかという不安もある。結局、先は諦めて、ここで終わりとした。残念だが、最後のピッチは天井が垂直に高く、十分に立派な空間だ。

探検班の役目は終わったところで、測量班は降りてくる気配がない。最終ピッチを登り返すと、降り口のもっと手前で近野さんが一人で測量をやっている。吉田さんは、二つ目の狭道で胸板が引っかかって先に進めないのだそうだ。私と縣さんが最終ピッチをもう一度降りて測量を完了した。穴を出る頃にはもう暗くなりかけていた。夕暮れのアブから逃げるように車に戻った。

停車場に戻ると、草むらに吉田さんの新品のガーミン(GPS)が落ちていた!出発前に近野さんに使い方を教わっていたのに、1mも進まない内に落としたらしい😓失くさなくてよかった。再び雨が降り出した。慌てて装備をレンタカーに放り込み下山完了。

計画が押して、時間が遅くなったので、五木村にはご飯を食べる店もコンビニもない。それならと、翌日の活動エリアに移るべく、二本杉峠を越え、1時間半くらいかけて美里町へ下りた。夜中前に着いた大きめの道の駅にはキャンピングカーが一台停まっているだけで、コロナの影響だろうか、お盆休みとは思えないほど閑散としていた。下界は蒸し暑く、夜中にまた激しく雨が降ってきて寝苦しかった。

本日の高低差 パーキング1175m 尾根1230m ガシラ1191m  合計94m

その2 8/11-13 天主山 につづく