その2 8/11-13 天主山 新洞探査
当初、内大臣川沿いから入山予定だったが、先月の大雨で林道が通行止めになり、登山口まで行くことができないことが出発直前に判明していた。検討の結果、確実に入山できる鴨猪川から穴谷を越え、天主山山頂を目指すことになった。まだ台風の影響でシトシト降る雨の中、面白味のない非石灰の古い林道を歩くだけのスタート。荒れた林道を辿っていると、斜面に線路がある。ちゃんとレールと枕木が残っていることもあれば、斜面が崩落してレールだけが空中に浮いている箇所もある。地図上では、レールの最終地点に何かの建物があるらしかったが、行ってみると、その谷のどんつきには、流されたのか壊れたのか、建物らしきものは何もなかった。あとで地元の人に聞くと、廃線は材木を下ろすためのものだったそうだ。山奥に延々とレールが敷かれてあるのは不思議な風景だった。林業の盛んだったころは道も綺麗で、人で賑わっていたのかもしれない。
谷の奥から石灰岩のエリアに入るべく、一気に稜線へ上り、登山道を天主山の山頂に向かって歩いた。時々休憩のために止まると、アブが集まってきて刺そうと(噛もうと?)する。私は刺されても数センチのアザのような腫れができるだけだが、縣さんはめちゃめちゃ広範囲に腫れが広がる。体質なのか。
稜線に石灰の露岩が現れたころには、日が暮れかけていたので、山頂の手前の登山道付近にテンバを定め、荷物を置いて周辺の洞窟探査に移った。疲れた脚を引きずって岩盤の基部を見に行くが、穴らしきものも何も見つからず、諦めてテンバに戻った。
私は最近、家の裏でカヤつきハンモックを吊るして昼寝をしている。テント持っていくよりもお手軽だし、山中では涼しくていいかと思ってそれを持って来た。そんな思惑とは別に、先月霧穴の洞内泊で、縣さんが超軽量ハンモックを持ってきていて、これはなかなか良いと言ったのがきっかけでチーム内にブームが来た、のかどうかは知らないが、他の3人もみんなハンモックを持ってきていて、偶然にも4枚のハンモックが吊るされることになった。吉田さんは買ったばかりのハンモックがすっかり気に入ったらしく、一切ハンモックから降りずにご飯を食べ、就寝。正直、日が沈むと寝る以外にやることもないので、だいたい8時から9時には寝て、6時から7時に起きるという生活になった。
生活感あふれるテンバ |
しかしながら、高度1300mではハンモックは涼しいどころか寒かった。稜線を風が抜ける度に背中がスースーする。レスキューシートにくるまって、ようやくウトウトした。起きたら、ダウンジャケットに身を固めた吉田さん以外、全員口を揃えて寒くて寝られなかったと愚痴っていた。ハンモック山行ビギナーなので、失敗も致し方なし。
本日の高低差 パーキング600m 稜線1514m テンバ1475m 合計953m
前半の探査のメインエリアは、内大臣川流域から広河原なので、2日目は天主山山頂を越えて、高度差800m下の谷へ降りて行かなければならないハードコースだ。途中、縣さんが上の方の斜面で短い洞窟を見つけた以外、特にめぼしい成果もなく、沢を下って内大臣川に着くころには、私は寝不足と靴ずれで、かなり疲労が溜まっていた。縣さんも、広河原の岩盤が立派なのを見て、これはぜひ探したいと言ったものの、今回はちょっと無理そうと諦めて、川の横にテンバを作って、また背中をスースーさせながらハンモックでウトウトした。
本日の高低差 テンバ1475m 山頂1494m 谷下580m テンバ744m 合計1097m
3日目はまた天主山山頂に登り返し、登山道を降り、車に戻る計画。つまり、また800m登って800m降りるわけ。といっても、さすがに直登ではなく、1200くらいまでは、傾斜のゆるい、所々土砂で壊れた林道をうねうねと登っていく。洞窟も見つからないので、テンションは上がらない。山を降りたら焼肉を食べるぞーというモチベだけで、それぞれ重い足を進めた。山頂を過ぎ、登山道に入ってしばらくして、縣さんが遅れ気味の近野さんを待つことになった。道標がまばらでわかりにくく、道を外れる可能性がありそうだ。吉田さんと私は、延々と続く下り坂の登山道を無言で降りて行った。林道まで出た時には、さすがに二人ともほっとして、えらい登山道だったねーと笑った。
停車場に着くと、たくさんの車が停まっていた。消防の赤い車とアンテナを見て、吉田さんが、おい、誰か遭難したみたいだぞ、と言ったので、えーそれは大変と思いながら、車を開けていると、吉田さんが消防か警察の人と何か話している。なんだろうと思ったら、吉田さんが、おい、俺たちだぞ、という。レンタカーが連日停まっていたので、誰かが心配して通報したが、登山届けを出していなかったので、昨日から捜索に入ったらしい。そういえば、昨日の午後、ヘリの音が聞こえたなあと思い出した。まさか自分が探されているとは夢にも思わず。
普段よく行く岐阜や三重ではメジャーな山に登らないし、そもそも登山道を歩くことが稀だったり、石灰の様子次第で行程が変わるので、登山届を出すということをすっかり失念していた。
届けてなくて、すみません、と謝ったが、レンタカーも16日まで借りてるし、まあ縦走してるんだろうと思ってました、無事で良かったです、と案外にこやかに対応してくれた。全行程とメンバー全員の個人情報を聴取され終わった頃、ちょうど縣さんと近野さんも下山してきた。
レスキューチームの中に、消防でも警察でもない、山に詳しいおじいさんがいて、私達が車の横に干していたケイビングスーツを見て、これは穴谷の穴に潜ってるんじゃないかと思っていた、と言ったので、谷に穴あるんですか?と聞いたら、知っとるが、絶対教えん!と突っぱねられた。地元で生まれ、この辺りの山のことは庭のように知っていて、消防や山仕事の若い人たちを訓練していて、足跡見たら何人入ったかもすぐわかる、などなどの話をされていて、なかなかお喋り好きなおじいさんだった。私達には無理に聞き出すつもりは全然なかっけれど、穴については最後まで絶対教えん!を繰り返していた。
レスキュー隊が全員帰ったので、装備を洗って、下山した。後半の計画から合流予定の沢屋の大西さんと待ち合わせ、近くのレストランに焼肉を食べに行った。ご飯を食べながら、2日ぶりにLINEを開けたら、レンタカー会社を通してか、私の親にも連絡がいっていて、今朝から心配と叱りのメッセージが母と姉から入っていた。熊本に行くとも山に行くともなんとも言っていないので、突然熊本の田舎の警察から連絡が来てわけがわからなかっただろうと気の毒に思う反面で、あー面倒と思いながら、説明と謝罪に追われた。
晩は、また道の駅で寝た。外で大西さんと談笑する縣さん近野さんを横目に、吉田さんと二人、クーラーを効かせた車内でウトウトしていると、いつのまにか後ろの座席と荷物置き場が寝床に早変わり、コンパクトカーの車内にギューギュー詰めで4人が寝た。だが、後ろはさすがに狭かったのか、朝起きると、縣さんも近野さんも外で寝ていた。運転席も中途半端にしか座席が倒れないので快適な寝床ではなく、寒いハンモックと同じ程度にウトウトできただけだ。山は寒すぎ、下界は暑すぎて、ぐっすり寝るのに適さない。
本日の高低差 テンバ744m 山頂1494m パーキング600m 合計1644m
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