入洞洞窟:てんご穴、あがた新洞
場所:岐阜県山県市
日程:2019/7/14(日)-15(月・海の日)
参加者:あがた、おかざ、近野、やまちゃん/14のみ(立命探検部)、カツヲ/14のみ(立命探検部)、藤井くん(岡大CC)
協力:洞口地主様、地元自治会長様
使用車両:あがたカー、おかざカー、近野カー、カツヲカー、藤井カー
会計:おかざ
宿泊:てんごの穴 内
グルメ:ダシダ鍋、グリーンカレーラーメン、おじや
電波:円原の伏流水の手前で不通になる。美山支所付近で連絡しておくほうが良い。
記録:近野
プロローグ
1972年の調査書(岐阜大学教育学部研究報告 第五巻1号)に記載がある「てんご穴」。
当時、岐阜県最長(1,515m)とされていたが、その後いくつも大きな洞窟が見つかり、今となってはミドル級の洞窟である。
報告書に記載のある、迷路状のルートやジプサム、熊の骨格などは興味深く、一度は行ってみたい洞窟だった。
しかし、JETのメインフィールドである岐阜県山県市にありながら、幾度もの交渉にも関わらず、地権者からの許可を得られず、JET発足以来ずっと謎の洞窟とされてきた。
副隊長のあがたさんが、地道に周辺エリアでの人脈を構築した結果、2019年になってようやく入洞許可を得ることができた。
入洞にあたって、地元の方と、洞内の再測量をお約束したので、再測量プロジェクトを「かんむぎプロジェクト・てんご穴測量」として定期的に実施している。
今回は、「第4回かんむぎプロジェクト」。
プロジェクトリーダーのあがたさんは生まれつき極度なせっかちのため、測量が大嫌いなので、今回は洞内泊をして一気に距離を稼ぎ、早くプロジェクトを終わらせよう!という趣旨だ。
「めざせ1000m!byあがた」の掛け声のもとに集まったのは、測量好きなJETメンバーと3名の若者たち。しかし、まだ500mにも達していないのだから、私は懐疑的だった。
7/14(日)
8:00 山県市役所 美山支所 に集合
あがたさんは、地主さんのお宅にご挨拶と、洞口のカギを借りに行く。
カツヲカーは前に見たときより凹凸が増えている。
ここから洞口へは車で移動。JETの三人は近野カーに同乗し、全3台で洞口へ向かう。
支所を出てすぐに、入山連絡(JETチームLINE)。
9:15 入山
梅雨日和で、雨模様のジメジメした日。
暖かくなってきたので、蛭にとっては最高のシーズンではないか。
絶対いる、きっと来る、きっと来る。
そう言って、みんな蛭におびえながら山を歩く。
この日の作業割り振りは以下のとおり。
立命の二人(山ちゃん、カツヲ):てんご穴の洞口から50m地点に発見された「あがた新洞」の測量。
あがた:二人を「あがた新洞」へ案内し、てんご穴との接続確認のあと、てんご穴の測量(支洞班)。
おかざ:てんご穴の測量(支洞班)
藤井くん、近野:「あがた新洞」とてんごの穴の接続確認のあと、てんご穴の測量(本洞班)
9:30 入洞(てんご穴)
※ここ以降は、てんご穴での活動のみ記載。
「あがた新洞」は、てんご穴と接続していると考えられており、接続地点と予測されているのは、てんご穴内のピット。
事前のストーリーでは、9:45ごろからてんご穴のピットから、煙幕を焚き、「あがた新洞」で煙を確認する。となっていた。
しかし、この日、てんご穴のピットを登ってみると、空気の流れは 上⇒下 だった。
「あがた新洞」のほうが上方にあるので、煙が上に流れる可能性はなく、接続の確認は困難に思えた。
予定の9:45になっても、私は煙幕を焚く気が無かったが、藤井くんが「一応やりましょう」と言うので、彼の若い真面目さに負けて、ピットに登り、しぶしぶ煙幕を焚く。
煙幕はすごい勢いで煙を出して、下へ下へと煙は流れ、あっと言う間に狭いピットに真っ白な煙が充満する。
煙に巻かれて息苦しく、逃げたいが、視界が煙で遮られ、1m先しか見えず、ピットから降りるのはけっこう危なかった。私はケイビング歴が長いのと、もともとノンビリした性格なので、落ち着いて行動できたが、狭いところで煙幕を焚くのはやめたほうがいいと思った。
煙はほんの5分程度で晴れて、元通りになった。
洞窟の中はよく空気が循環していることを実感した。
後で、あがたさんに聞くと、やはり「あがた新洞」で煙は一切確認できなかったそうだ。
また、「あがた新洞」では、大きな音を出したりして、合図していたらしいが、てんご穴のピットからは何も聞こえなかった。
そもそも、煙から逃げて、すぐにピットを降り始めていたので、聞こえなかったのかも?
さて、接続確認は無事に失敗に終わったので、測量スタート。
藤井くんと二人で、前回の測量終了地点へ移動する。
前回の終了地点はP67。P67―77からスタートだ。
藤井くんは、私が知っている限りでは、日本国内でJET以外で初めてペーパーレス測量を導入した人。
ふだんからTopoDroid+DistoXで測量しているというだけあって、一緒に作業しやすかった。
しかし、ここ数週間、雨天続きなので、洞内は滴下水が多く、地面の水も多め。
そうでなくても、てんご穴はなぜかいつも寒い洞窟だ。
藤井くんは普段から頻繁にケイビングに行っていて、経験豊富なのだが、寒いのと狭いのと、水が多いのと、延々と続く測量作業にやられて、午後遅めになってくるとすっかり弱っていった。
個人的には、夜20時ごろまでこのまま黙々と測量する気だったが、文句は言わないが、だんだんとしょんぼりしていく若者が気の毒になった。
何も知らない大学生を、辛い作業に従事させる、ブラック企業の社長のようではないか。
と、思ったので、16時ごろだったか、少し早めに作業終了とした。
その日のキャンプ予定地は、30分ほど戻った支洞の分岐だったので、二人でウキウキと戻っていくと、そこには魔人アガタがいた。
アガタ「ちょうどいいところに来た!今からみんなでこっちの支洞を測量しようぜ!」
藤井くんは、最初、信じられないようだった。ようやく逃れた労働にまた捕まったのだ。
私は「あー、そー来たかー」とがっくり。
どっちみち、やらないと測量は終わらないのだ。
支洞がけっこう長くて、入り組んでいることを知った時点で、もう腹をくくって作業したよ。
二人で観念して、能面のように黙々と、さらに3時間ほど測量を続け、私の予定どおり20時ごろまで測量することになった。
後半、魔人アガタとペアを組んでいるオカザがやって来て、
「あの~DistoXの充電が無くなっちゃったので、先にキャンプ地に戻ります~」とトンズラ宣言をして去って行った。
私「そーか、そーか、充電が無くなるってゆー手があるよなー。ふむふむー。」
藤井くん「えっ?何か言いました?」
私「いや、何も。独り言...。」
測量したいけど、サボりたい。いつもそこがせめぎ合いである。
まぁ、そのあと30分くらいで私たちも作業完了し、キャンプ地に戻るとオカザが鍋を作ってくれていましたよ。
わーい、わーい。やったぜー。
鍋のダシ:ダシダ、グリーンカレーラーメンのスープ
鍋の具:はくさい、えのき、エリンギ、ソーセージ、いか、がんも、つくね、他
〆の具:グリーンカレーラーメン
洞窟では食べるのだけが楽しみだ |
地面が不安定なので、常に鍋を握っていないと倒れてしまうのだ |
食べた後は寝る。 finetrakのポリゴンネストはちょっと濡れていても暖かい。 ダウンの寝袋はほとんど使わなくなってしまった。(宣伝?) |
21時ごろから鍋を食べ、寝る準備をして、全員就寝は24時過ぎ。
てんご穴は寒いと思い込んでいたが、キャンプ地は乾燥していたので快適で、翌朝は寝坊するという失態。
7/15(月・祝)
9:10 起床
「わー、寝すぎ」
といいつつ、昨夜の鍋に残りのラーメンやドライライスを入れて朝食に。
のんびり食事して、片付けて、活動スタートは11:00ごろになった。
藤井くん「これって、洞内泊した意味あったんですかね...?」
いいこと言うね!若者よ!
でもね、この洞窟は、一回出ると再び入るのが嫌になるという魔法の洞窟なのだよ。
出た後、1~2か月インターバルを置かないと、トラウマが払拭されないのだよ。
だから、洞内泊する意味はあるんだよ!
前日に全員で取り掛かった支洞の測量が、まだ残っていたので、この日も続きの作業。
トレンチが網の目のようになって、落盤も絡んでいて、ホールの形状を把握するのが非常に難しい支洞だが、2チームで手分けして何とか支洞の測量はほぼ終わった。
洞窟でSNSやってるのではなく、ペーパーレス測量の様子。 |
今回導入した小判。分岐点など課題のあるポイントに目印として置く。 |
しかし、ループがたくさんあって、測量線が重なり合うので、やりながら混乱してきた。
いったい誰が製図するのだろうか?
こりゃ、大変だなー。
でもやりがいがあるなー。
誰がやるのかなー。
と思ったけど、怖くて聞けなかったね。
さて、藤井くんは、最近、洞窟写真にはまっているらしくて、ずーっと「写真撮りたい」と言っていたので、最後1時間くらいは、写真を撮りなよ!ってことになった。
そう決まったとたん、藤井くんはイキイキとし始めて、サクサクとポイントを取り、15:30ごろに予定の作業を終えて、あとは一人でカメラを持ってうろうろしていた。
頑張って重いカメラ機材を持ってきたので、良い写真が撮れていると良いね!
この日、18:30に地主さんに入り口のカギを返す約束になっていたので、17:00撤収の予定。
私とアガタさんオカザは、未探検の狭いルートを確認した後、適当なところで切り上げて撤収を開始した。
最後、写真を撮っていた藤井くんと私が、洞口を出たのが18:00。
下山は5分~10分なので、ぱぱっと車に荷物を積み込んで、地主さんのお宅へと挨拶に伺った。
エピローグ
入洞から別行動だった立命の二人は、私たちの車にメモを残していた。
15日は学校の授業があるとかで、14日の夕方に先に帰って行ったのだ。
貸していたペーパーレス測量の機材返却の旨と、あがた新洞の竪穴部分のロープの撤収に失敗したというメッセージだった。
次回、自分たちが来て、撤収します。と書かれていた。
ロープの撤収に失敗したというが、立命の二人は経験豊富で、安心できる。
岡大の藤井くんも去年の年末に熊石洞で会ったときよりも、ずいぶんと頼もしくなっていた。
自分たちで頑張って活動しているのもあるだろうし、普段一緒に活動する先輩がしっかりしているのだろうなぁ。
知らないところで、若いケイバーがちゃんと育っているのを見て、ほっこりしたオバハンだった。
結局は、測量の辛さと、迷路状の支洞の測量作業に阻止されて、あがたさんの目標1000mには届かなかった。
しかし、おかげさまでけっこう作業が進んで、前途が明るく見えてきたぞ。
以上。